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闘うコラム大全集
- 2015.10.10
- 一般公開
米国は寛容な対中戦略を改め無法ぶりを許さない姿勢を
『週刊ダイヤモンド』 2015年10月10日号
新世紀の風をおこす オピニオン縦横無尽 1103
9月末の米中首脳会談で最も充実した社説を出したのが米国の「ウォールストリート・ジャーナル」(WSJ)紙だったと思う。
同紙は9月25日付で「北京の新しい秩序」と題する社説を掲げ、これからの対中政策のあるべき姿を説いた。社説はまず両国間に考え方の違いはあるが、米国は、冷戦終結後の国際社会で中国に「責任ある利害関係者」になってほしいとの思いで接してきたと、歴史を振り返る。
冷戦時代、米国の最大の敵はソ連、そのソ連から中国を引き剥がし、ソ連を崩壊に追い込んだのがニクソン大統領の対中接近だった。
米国は中国をソ連とは根本的に異なる国と見なして、あらゆる形で支援した。交流を拡大し、中国を内側から「民主化」させ、米国の戦略的パートナーに仕立て上げようとした。大きな市場としての中国の可能性にも期待した。その思いを表現しているのが「責任ある利害関係者」だ。
ところが徐々に明らかになったのは、米国の寛容な態度を、中国は「米国の弱さ」と受け止め、そこに付け込もうとすることだと、WSJは警告する。このような中国の米国観は、今回の首脳会談の2つの大きな課題、南シナ海問題とサイバー攻撃問題においても顕著だったと、社説は説く。とりわけこの両分野において、「中国の無法なる振る舞い」は許し難いと、WSJは強い調子で論難した。
「2010年以来、中国は南シナ海のほとんど、メキシコ湾の倍以上の広さを持ち、世界貿易を支える船の往来の最も激しい航路を、議論の余地がない中国の主権だと主張する」として、だが中国の領有権の根拠は蒋介石の国民党政府が1947年に南シナ海の地図上に書き込んだ9つの点にすぎず、国際法の根拠は疑わしいと批判する。
習近平主席との合同記者会見でオバマ大統領は、南シナ海で中国は埋め立てを「やめなければならない」と断じたが、習主席は「古代から中国のものだった」の一言で済ませた。
米国の批判を平然と突き放した中国をオバマ大統領は追い詰められなかったが、WSJは明確に書いた。中国が根拠も不明な九段線に基づいてベトナム、マレーシア、インドネシアの領土主権を侵し、米艦船の航行を妨害し、ベトナムの海洋調査船のワイヤーを切断し、日本の尖閣上空に防空識別圏を設定したと。
興味深いのはWSJが尖閣を「尖閣」と書き、その後に必ず付いていた中国名の「釣魚島」という表記を入れなかったことだ。米国政府も今では同様の表記をしており、米国の対中認識の変化を表している。
WSJは南シナ海における中国の行動が孫子の兵法に基づいているとも指摘した。圧倒的な優位を築いて戦うことなく相手の戦意をくじくことを最高の勝ち方とする孫子の教えが実施されているのが、一連の中国の海における蛮行だとの主張は正しいのである。
この中国にどう向き合うべきか。WSJは「ホワイトハウスは(南シナ海に中国が築いた)人工島の12カイリ内は米国の考えでは公海であるのであり、そこに米海軍の艦船を航行させよ」と主張する。
そうしなければ、中国は米国が彼らの行動に暗黙の了解を与えていると考える。従って、中国のこの種の「誤解」を速やかに解き、国際社会の規範を受け入れさせなければならないと指摘している。
サイバー攻撃についても厳しい制裁を科すことで、攻撃が何も生み出さないと知らしめることが重要だと説く。
国際社会は習体制の無法ぶりをいつまでも許してはいない、米国政府はそのことを中国に知らしめる先頭に立つべしとの主張を、私は共有するが、その主張から最も遠いのが、任期を1年半も残しているオバマ政権なのだ。
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