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- 2015.05.19
- 一般公開
「五月のそよ風の中を散歩した日」
# 目を細めて香りを楽しむ
みなさん、こんにちは。五月の爽やかな日々が続いています。
お元気ですか?
十四日木曜日の午後、久しぶりに母と散歩をしました。今年、数え年
で百五歳の母は、もう長い間、外に出ることなく過ごしてきました。冬
の寒い日は風邪を、またインフルエンザが流行れば感染を心配して、つ
いつい家の中ですごしてしまいます。
けれど十四日は本当によいお天気でした。近くの神社さんの緑の境内
を、母と一緒に歩きました。その二日前の十二日には、例年より早く台
風が来て激しい雨が降りました。翌日からは台風一過で空は青く澄みわ
たりました。陽射しが明るく、空気も爽やかです。
母に言いました。
「お母さん、お外を散歩しましょう」
母を車椅子に乗せ、五月のイメージの明るいブルーのショールをかけ
てお出かけです。
玄関の扉を出ると、梅花空木(バイカウツギ)の純白の花が満開です。
とてもいい香りです。甘い香りにジャスミンに似た爽やかさが漂って、
離れた先からでもその香りに気づきます。
母に話しかけました。
「お母さん、梅花空木よ。真っ白できれいねぇ。いい香りねぇ」
ちなみにこの花の花言葉は「気品」だそうです。母が目を細めて香り
を吸い込んでいます。花の前で撮った写真には母が穏やかな表情でおさ
まっています。
# 人の声・街の音
緑のトンネルになっている神社の参道を歩いていると、サワサワと風
が吹き抜けました。正面から吹いて来て、顔全体にそよ風が当たり、母
の銀髪が風になびいて流れました。
一緒にいた秘書やお手伝いさんが、「わあ、いい気持ち」「爽やかー
」と異口同音に感嘆の声をあげます。この風の訪れに、母も声を出して
喜びました。
参道の入口にしばらくとどまって、駅へ向かう人、犬の散歩をさせる
人、走ってゆく車やバイクなどを眺めました。ご近所の方が通りかかっ
て、「お元気そうですね。如何ですか」と声をかけてくださり、優しく
も幸せな時間でした。
ふと母を見ると目をつぶっています。眠っているのではありません。
風のそよぎや車の音、人の足音、わずかなざわめき……いろいろなもの
を感じているのです。
しばらくそうして、やがて母に声をかけました。
「お母さん、疲れない?もうお家に帰りましょうか」
母は首を縦には振りません。そこで、今度はお稲荷さんの祠にお参り
に行くことにしました。コトコト、コトコト、車椅子が音を立てます。
石畳の参道を上がっていくと、そこにお稲荷さんがいらっしゃいます。
私はいつもここで、いろんなお願いごとをします。
神社さんにお参りする時は、二礼二拍手一礼をして、あまり長くとど
まらないようにします。神様のいらっしゃる本殿の拝殿で、長い間手を
合わせ、あれもこれもお願いするのは、なんとなく畏れ多いような気が
するからです。
靖国神社さんにお参りする時は、英霊にこの国を守ってくださり、い
まも私たちを守ってくださっていることに、心からの感謝を捧げます。
「日本をお守り下さりありがとうございます」と心の中で繰り返します。
他の神社さんでも、「お守り下さり、本当にありがとうございます」
と繰り返します。
# お隣さんの稲荷神社
一方、稲荷神社は、「お稲荷さん」の気楽さでお参りが出来ます。で
すから私はお稲荷さんには、ご近所づき合いの気持でいろいろなことを
お願いします。
「どうぞ、母の健康をお守りください」「家族や友人の健康と幸せをお
守りください」「プロジェクトがうまくいくように、どうぞお力を与え
てください」
個人的な願い事と共に、「日本国が中国にしてやられないように、日
本人に知恵と勇気をお与えください」など、ありとあらゆるお願いをし
ます。必然的に、祠の前にたたずむ時間は長くなります。
このように、沢山の私的なお願いをしているお稲荷さんを、母と共に
お参りし、みんなで手を合わせました。私は、母が健康でもっともっと
幸せな日々を過ごせるよう努力しますので、どうぞお守りください、と
お願いしました。
ここでも一枚、また記念撮影です。
# 神社と私たちの神
改めて日本の神社について考えました。神道の神社は、キリスト教の
教会や仏教のお寺とはひと味もふた味も違います。
神社さんには神社毎に御祭神がいらっしゃいます。天照大神であった
り、須佐之男命(すさのおのみこと)であったり、或いは出雲大社の場
合は大国主命です。靖国神社がお祀りしているのは英霊たちです。
各神社には鏡や剣などが御神体として掲げられていますが、文字に書
いた聖書や経典はありません。
鏡は何を意味するのでしょうか。ご神体の鏡は、何の装飾もなく、ま
っ平らです。そこには蓄えるものも、とどめておくものも、逆に隠すも
のもありません。鏡は、清浄で澄みきった存在としてそこに在ります。
祈りを捧げる私たちにとっては、自らを映し出す光だけがそこにありま
す。
その鏡を、私たちは宝物として崇め、目に見えない神々や英霊を尊崇
してきました。
その心は何でしょうか。自分自身を映し出し、「神々がどれだけしっ
かりと、自らの心の中におわしますか」と問う心ではないか、という気
がします。
日本人の心の中に神々がおられるのです。神々の存在を確かめ、確信
させる大事な場所が神社なのかもしれません。ですから神社にお参りを
する時、ひたすら自分を無にして、清浄な心を保ち、感謝をするのがよ
いのです。そこから自ずと新たな活力や希望、決意が生まれるのではな
いでしょうか。
キリスト教や仏教の教えにはそれなりの有難さと理論があります。神
道は理論ではありません。神々への無条件の信頼と無限の感謝が中心軸
にあるような気がします。
こんなことを考えながら、久しぶりに母と一緒にお参りしたことを、
大変嬉しく思いました。梅花空木のもう一つの花言葉は「回想」です。
私も花の香りとともに、この五月十四日を、穏やかで静かな幸福感に満
ちた佳い一日として心に刻みたいと思います。
爽やかな五月、皆さまも、お近くの神社さんへお出かけになり、楽し
まれて下さいね。
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